誰でも、緊張や不安で汗をかいた経験はないでしょうか?
人は体にストレスを受けたとき、血圧が上がり心拍数が上昇します。
このとき脳内にある偏桃体という部分では、体に受けたストレスを不快と判断して体からアドレナリンを分泌させます。
アドレナリンが分泌されれば、交感神経が刺激され体は興奮状態になります。
交感神経は汗をつかさどる神経なので、アドレナリンの影響で交感神経が刺激されれば発汗を促します。
「ドキッ」「緊張」「不安」という現象は体にとってストレスとなるため、アドレナリンが分泌され交感神経が刺激され汗がでてしまうことになります。
精神性発汗にはどのような理由があるのか?
人の体はストレスの影響で汗がでる仕組みですが、なぜ汗がでる必要があるのか、これは人類が生きて行く上で必要なことだったからです。
今よりもずっと昔、人は食料を得るために木に登ったり、獲物を捕るために弓矢や槍を持って動物を狩っていました。
精神性発汗によって手のひらや足の裏に汗をかかなければ、木に登るときに滑って木から落ちることもあるでしょうし弓矢や槍で狩りをしようにも手が滑れば上手に動物を狩ることもできません。
外敵から襲われたときにアドレナリンによって興奮状態にならなければ、とっさに動くことができず生命の危機にも繋がります。
精神性発汗によって出る汗は人が生きて行く上で必要なものでした。
現代人の精神性発汗の悩み
昔は生きて行く上で必要だった精神性発汗ですが現代では邪魔者扱いされています。
「手に汗をかく必要があるの?」「緊張したときに額から汗がでる必要ってある?」「わき汗って必要?」と汗が邪魔だと思っている人は多いです。
確かにそうですよね。
現代人は狩りをするわけでもないですし外敵から襲われることもありません。
現代人は精神性発汗の必要がないと思っているので緊張したとき不安なとき驚いたときにかく汗を恥ずかしと考える人は多いです。
精神性発汗で出る汗を恥ずかしいと気にしすぎてそれが原因で精神性発汗が怖くなるという現象が起きてしまいます。
不安で汗がでる精神性発汗
精神性発汗は通常、緊張やドキッとする場面など体にストレスがかかったときにでるものです。
でも、現代では緊張やドキッとする場面ではないのにもかかわらず汗をかいてしまう人もいます。
予期不安からくる精神性発汗と呼ばれるもので「汗をかいたら嫌だな」「汗をかいたら恥ずかしいな」と不安を持つことで汗をかいてしまう現象です。
「汗をかいたら嫌だなと思うことで」脳は緊張状態に陥って「汗を出せ」と命令します。そうすると、脳から命令された汗腺が汗を出します。
心の中で汗をかいたら嫌だな、恥ずかしいなと思っているので実際にその状態になってしまうとますます不安になり緊張も増します。
そうなるともう汗が止まらない状態になり、不安が不安をよんで汗が止まらなくなる悪循環になります。
現在、予期不安の精神性発汗で悩んでいる人が多いと言われています。
精神性発汗を治すには
精神性発汗を治すには、潜在意識にある「不安」を取り除くことが必要と言われています。
しかし、嫌な経験を取り除くことは簡単ではありません。
「人よりも多く汗をかくことぐらいで悩む必要なんてない」という人もいるかもしれません。
でもそれは、汗をかく人からしてみれば、「そんな経験してないから言えるんだよ!」って思ってしまいますよね。
まず、本当に精神性発汗からの汗なのか?調べる必要があります。
糖尿病や甲状腺機能亢進症(バセドウ病)でも、汗をかきやすくなってしまう症状もあるのでまずはその病気からくるものではないのか?確認が必要です。
精神性発汗の対策はイメージトレーニングが大切
交感神経を高めないようにするには、不安や緊張をできるだけ軽減しなければなりません。
どのように不安や緊張を軽減するのか?一番簡単な方法は過去に自分はどのような状況で汗をかいてしまうのか?を思い出します。
その状況をあらかじめ把握して、その状況は必ず来るものだと考えてイメージトレーニングします。
- 「こういう状況で汗をかくけど、自分は落ち着いている」
- 「人に見られている気がするけど、気のせいだ」
- 「変な目で見られているのは気のせいだ」
イメージトレーニングよって、その状況が来て汗が出ても、「いつものことだ」「汗をかくのは分かっていた」「こんな汗で不安や緊張はしない」と自分に言い聞かせます。
その結果、完全にではないですが、交感神経の高ぶりを押さえて、不安や緊張を和らげます。
これによって汗が止まるわけではありません。
しかし、汗の量を減らすことができれば、その状況は克服できるんだ!と自分への自信につながります。
不安や緊張をすべて取り払うことは難しいですが、自分自身をリラックスさせ、体を安心させることが克服に繋がります。
精神性発汗の改善はリラックスが大事
精神性発汗を軽減させるにはリラックスが大事です。
緊張や不安で顔や頭に汗をかいてしまうとき、私たちの体の状態は興奮状態になり心拍数は上がり心臓はドクドク鼓動が早くなり、呼吸は浅くなります。
人前で話をするのが苦手な人は経験があると思いますが心拍数が上がり呼吸が早くなり言いたいことが言えなくなって頭の中が真っ白になってしまい汗がダラダラと流れてくる。
交感神経が高ぶると汗をかきやすい状態になっています。
交感神経の高ぶりを抑えるには「リラックス」をすることが必要になります。
リラックスをすることによって副交感神経が優位になり高ぶった交感神経を抑えることができます。
リラックス方法は色々ありますが自宅で簡単にできるリラックス方法を紹介します。
- 呼吸
- 入浴
- ツボ押し
詳しい紹介については「改善方法 リラックス」を見てください。
様々な予防方法
リラックス以外にも効果的なものを紹介します。
サプリメント
精神性発汗とストレスには関係がありストレスが多い現代社会ではストレスをため込まないことも汗を抑えることになります。
サプリメントは人に必要な栄養素を簡単に摂取することができます。
その中には「ストレス」「精神疲労」に効くサプリメントもあり、手軽にストレスや精神疲労に対処することができます。
体をストレスから守るセロトニン
セロトニンとは体内物質の一つで精神の安定にかかわりのある物質です。
セロトニンの分泌がしっかりしていれば、たとえ体にストレスを受けたとしてもストレスから身を守ってくれます。
セロトニンが不足しているとストレスから身を守ることが難しくなりイライラや不安感を引き起こしてしまいます。
サプリメントで補う場合、セロトニンを直接摂取することはできないのでセロトニンの分泌に必要な「トリプトファン」が入っているサプリメントを取ることでセロトニンを作ることができます。
精神性発汗とは違う男性に多い頭部多汗症と顔面多汗症
緊張や不安で汗をかいてしてう精神性発汗ですが、緊張や不安を感じる場面ではないのに頭や顔に汗をかいてしまう場合には頭部多汗症や顔面多汗症の疑いがあります。
原発性局所多汗症診療ガイドラインの報告によれば、頭部多汗症、顔面多汗症は男性に多く見られ、長期間の間、数年にわたって毎年増加することがあるといわれています。
熱い食べものを食べた後、飲み物を飲んだ後、またはストレス等によって、髪の毛はシャワーを浴びた後かのように水滴が滴り落ちてくるほど汗をかきます。
このような汗は数分で収まるのが通常ですが、ひどくなると、数時間から1日続くこともあると言われています。
その結果、人間関係を悪くして、心に傷を負ってしまう人も少なくありません。
自分でできる多汗症診断
汗をかきやすい方は、自分が多汗症ではないかと心配するものです。
このガイドラインには、多汗症の診断項目があるので、
自分が当てはまるのか確認してみて下さい。
- 25歳までに最初に症状がでた
- 体の半分にのみ発汗がある
- 睡眠中は発汗が止まっている
- 1週間に1回以上多汗のエピソードがあること
- 家族に多汗症の方がいる
- それらによって日常生活に支障をきたすこと
以上、2項目以上を満たす場合、多汗症の可能性があります。
あくまでもガイドライン上の診断なので、これに2つ以上当てはまるから絶対に多汗症ということもありません。
詳細な診断が必要な人は医療機関の受診をおすすめします。